幡頭崎(はづさき)は、旧師崎村にある。羽豆とも書く。伝え言うには、知多郡は長く南海に突き出し、その形は箭(矢)のようであって、この岬は東南の果てにあり、箭の筈(はず:弓の弦をかける部分)に似ているため「羽豆の稱」の名が起こったという。この岬は一つの山となっており、断崖は非常に高く、険しい岩は百尺(約30m)で、高くそびえ立ち、古木が深く繁って僅かに歩く道を通している。

絶頂の風景は、三面ほがらかに開け、蒼海の無邊無涯を眺み、西は伊勢の朝熊嶽・神島、志摩の日和山まで見渡し、東南は三河の佐久島・かち島・伊良古崎、遠く海中に出て、翠の帯を引くようである。また朗晴の日は、はるか彼方に富士の雪が碧海の末に浮かび、近くは篠島・日間賀島・野島・松島・大磯島・鷲渡島・鳶崎島・ 平島・かもめ島・木島・つくみ島・鼠島・内地島・えびす島等をはじめ、その他の小島は数をしらず、杯面に棋石を布いたようで、只一瞬、一息で雙眸に入る。

山水の景勝は、実にこの地にまさるものはない。麓には小高い石山がある。地元の人は日和山と称し、幕末頃は、その山の上に十二支の方角(干支)を彫った石を置いて方位を定め、風雲晴雨を占い船路の便りとする。ここもまた、海天を望む遮るもののない素晴らしい絶景である。

神のます 羽豆のみさきの磯邊には 浪のしらゆふ かけぬ日ぞなき
成昌
わたの原 沖つ千重波打ちよせて 磯もとゆする 羽豆が崎是
道直
山鳥の 尾張てふ國のこれやこの 姿なしたる 師崎の浦
相房

参考:『尾張名所圖會 前編 巻六』(岡田啓・野口道直、天保十五年-1844)

知多郡南知多町
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