垂井水

移れる影そ 年を経にける

不破郡垂井驛の南宮の鳥居への道に有る。古から有名であったこの井戸はこれともいう。イニあづさ弓。

『詞花集』雑(久安七年 [1151] / 作者が美濃に赴任したのは康和二年 [1100] 頃)

昔見し 垂井の水はかはらねと 移れる影そ 年を経にける
藤原隆経 昔見た垂井の清水は変わらないが、水面に映る私の影は年を経ている

二條良基公の『小島のすさみ』に、この歌は隆経が美濃の國司に下ったときに詠んだという。堀川院御宇 [1087〜1107] 頃に美濃守護だった。

『夫木』(延慶三年 [1310] 頃)

我袖の 雫にいかゝくらへ見ん まれに垂井の 水のすくなき
為相 私の別れの涙と比べて、稀に垂井の水が少ない

『藤川記』(文明五年 [1473])

浅はかに 心なかけそ玉簾 垂井の水に 袖もぬれなん
一條太閤兼良
旅衣 垂井の水の心あらは 面やつれせし 影なうつしそ
同人 旅衣を着た私の姿、垂井の水に思いやりがあれば、やつれた顔を水面に映すな

『覧富士記』(永享四年 [1432])

昔見し 影をしるへにまたや我 思ふ垂井の 水を結はん
堯孝

参考
『美濃明細記』(伊東実臣、元文三年-1738)