松風里

まなづるの千代呼ぶ聲を

『夫木抄』をはじめ『藻鹽草』『松葉集』等に、松風の里を尾張の名所として載せている。その地は定かでないが、『厚覧草』に「松風の里、正覚寺の邊(ほとり)をいふ」と見えるので、先人の伝えによりこゝに出した。或いは、鳴海あたりの名所である、と鳴海の里老は言うが定かではない。

『夫木』
松風里 尾張

松風の 里にむれゐる眞名鶴は 千とせ重ぬる 心ちこそすれ
よみ人しらず 松風の里に群れ集まる真鶴は、幾千年と重ねる神聖な心地がするよ
浦近く 爰に馴來て眞名鶴の 千代呼ぶ聲を 松風の里
冷泉爲泰卿 海辺に近いここに慣れきて真鶴が千代よぶ声を聞く

『富士見道記』

旅枕 ゆめ路たのむに秋のよの 月にあかさん 松風の里
法橋紹巴 旅先で草枕を結ぶ身として、はかない夢路に頼るくらいなら、秋の夜の月を眺めて明かそうではないか
秋
ひと通り 過行く雲に村雨の 聲をのこせる 松風の里
粟田守業 通り過ぎて行く雲が、去り際に通り雨の音を残していった
秋

『句集』

松風の 里は籾(もみ)する しぐれがな
嵐雪 松風の里、稲の籾摺りに精を出す人々、パラパラと冷たい時雨が降る
秋 初冬11月

参考
『尾張名所圖會 前編 巻四』(岡田啓・野口道直、天保十五年-1844)

名古屋市熱田区伝馬2丁目3番14号
種別  
時期  秋11月