『藻鹽草』に、「尾張或いは美濃」とあるが、東御殿の内がその舊地であって、もとは東の方に大樹の老松があった辺りであるといわれ、今も「ねざめの櫓(やぐら)」と称す名がここに残っている。
『古今六帖』
東路の 寝覚の里は初秋の 長き夜ひとり あかす我ぞも
躬恒 東路の寝覚の里で、初秋の長い夜を一人眠れず明かしているよ
秋
『夫木』
風の音に おどろかされて吾妹子(わがもこ)が 寝覚の里に 衣うつなり
伊勢大輔 風の音で目が覚めると、私の妻が寝覚の里で衣を打っているよ
秋
『千首和歌』
あられずよ ね覚の里の梅がかに 鸞来ぬる 月のあけぼの
爲尹卿 じっとしていられず寝覚の里の梅の香りに誘われてウグイスが来た、明け方の景色
春
『新續題林』
此里の ねざめにまがふ波たけて 河より遠(をち)に 千鳥啼なり
法皇御製 この里でふと目覚めたときに波の音が聞こえ、河の遥か遠くでは千鳥が鳴いているよ
冬
『富士見道記』
里遠き 山もね覚の きぬたかな
紹巴 里から遠く離れた山でも、寝覚のきぬた(衣を打つ音)が響き渡るよ
秋
参考
『尾張名所圖會 前編 巻四』(岡田啓・野口道直、天保十五年-1844)