下ノ郷村にあり、白弓橋ともいう。ここは伊勢路より木曽路へうつる中道として、佐屋・神守より清須・小牧へ貫いている。
次のような言い伝えがある。
むかし、伊勢・伊賀を領していた諸侯が、この橋を過ぎなさった時、鴛鴦(をしどり)が水に浮かび遊んでいた。そこで、橋の上から白木の弓で雄鳥一羽を射とめ、小牧宿の館に持ちこみ、これを肴に調理させた。その夜、この殿の夢に、あやしき女一人来て、我が夫失ってうらめしと言いつつ、周りに落ちて散っていたかの鳥の首を拾いとると、たちまち鴛鴦の雌鳥となって飛び去ったのを見て覚めた。
翌年、帰りの途でこの橋を渡られた時に、また鴛鴦どもが浮かび居たので、かの弓で一羽を射落された。今度は雌鳥であったが、その羽の下には雄鳥の頭を差し挟んでいたのであった。侯はこれを見て大変驚き、去年夢に見た雌鳥はこれだったと、哀しさやるかたなく覚えた。そこで、菩提のために、一寺をこの地に建立し、白弓山鴛鴦寺と名付け、僧を置いて鳥の亡き跡を弔(とむら)わせ、弓矢も寺に留めて帰国されたという。
しかしその後、故あって鴛鴦寺は廃れ、今はこの橋にのみその名を残している。河内国の雁塚と同様の談である。
参考
『尾張名所圖會 後編 巻三』(岡田啓・野口道直、明治十三年-1880)